工場・倉庫の「音の問題」とは?塗装工事で改善できる意外な効果とは
はじめに
工場や倉庫でよく聞かれる悩みの一つが「音」の問題です。
作業音、機械音、雨音、そしてそれらが反響する構造──。
このような音の問題は、作業環境の悪化や近隣からの苦情にもつながる深刻な課題です。
実はこうした音の問題の一部は、塗装工事で改善できることをご存じでしょうか?
本記事では、工場・倉庫における音の問題点と、それに対する塗装工事の効果について解説します。
工場・倉庫における音の主な問題点
作業環境の悪化
- 音がうるさいことで作業者の集中力が低下。
- 会話や指示が聞き取りづらくなり、作業ミスや事故の原因に。
- 長時間の騒音環境が、耳鳴りやストレスの原因となることも。
建物構造による音の増幅
- 折板屋根や鉄骨構造など、音を反射・共鳴しやすい素材が多く使われている。
- 雨が降ると屋根に当たる音が「バチバチ」と響く。
- 内部の音が跳ね返ってこもって聞こえることも。
近隣住民への騒音問題
- 外壁や屋根から作業音や機械音が外部に漏れる。
- 騒音規制法や条例に触れるケースもあり、行政指導や改善命令の対象となる可能性も。
塗装工事で期待できる音響対策効果とは?
塗装工事は「外観美化」や「防錆・防水」のイメージが強いですが、音の対策としても有効な手段です。
特に、以下のような機能性塗料を使った工事で効果が期待できます。
制振塗装(デッドニング塗装)
- 折板屋根や金属壁に振動を抑える特殊塗料を塗ることで、共鳴音・雨音の軽減が可能。
- 屋根にあたる雨音や、設備稼働時のビビリ音を吸収・減衰。
🎯 制振塗装の効果とは?
✅ 振動の抑制
-
塗膜が金属面の固有振動を吸収・分散することで、金属音や共鳴音を軽減。
-
折板屋根で問題となる雨音や、設備稼働による響き音などに有効。
✅ 音の反響・こもりの抑制
-
屋内の音が金属面で跳ね返るのを抑え、耳障りな反響音を低減。
-
特に高音域の雑音(キンキンした音)に効果が出やすい。
📊 音の軽減に関する具体数値(例)
◉ 1. 音圧レベル(dB)の変化
測定対象 | 施工前 | 施工後 | 減衰量 |
---|---|---|---|
折板屋根の雨音(内部) | 約75〜78 dB | 約65〜68 dB | 約10 dB 減少 |
機械音(振動伝播あり) | 約80 dB | 約70 dB | 約10 dB 減少 |
※10 dBの減少は、体感で「半分くらい静かになった」と感じるレベルです。
◉ 2. 振動減衰率(Damping Loss Factor)
-
一般的なスチール材:0.001〜0.003(ほとんど振動を吸収しない)
-
制振塗装後の折板(例:アクリル制振塗料塗布時):0.02〜0.05
→ 振動吸収性能が10倍以上向上するケースもあります。
🧪 使用される塗料例と特徴
製品名 | メーカー | 特徴 |
---|---|---|
デッドニングコート | 関西ペイント | アクリル系・高粘度、厚膜タイプで振動吸収性能高 |
ノイズリダクションコート | 日本特殊塗料 | 防音+制振性、屋根裏に塗布可能 |
ガイナ(副次的効果) | 日進産業 | 熱・音エネルギーを同時に緩和、断熱と遮音の両立 |
⚠️ 注意点
-
厚膜塗装が必要(1mm以上の厚み)なため、通常の外装塗装より施工時間・コストがかかる。
-
単体で完全な防音はできないため、吸音材・遮音パネルとの併用が効果的。
-
実際の効果は構造、塗膜厚、面積、音源の種類によって異なります。
吸音・遮音塗装
- 吸音性のある塗料(多孔質塗料など)を用いて、工場内での音の反響を抑える。
- 高音域のキンキンした音をやわらげ、会話や警告音が聞き取りやすくなる。
🎯 吸音塗料の効果とは?
✅ 室内の反響音を抑える
-
金属製の屋根や壁は、音をよく反射します。
-
吸音塗料は**音を吸収する微細な孔(多孔質構造)**を持ち、音エネルギーを熱に変換。
-
特に**高音域(話し声・機械の甲高い音)**に効果的。
✅ 音の明瞭度・作業環境の改善
-
反響音が減ることで、会話が聞き取りやすくなり、作業効率や安全性も向上。
📊 音の軽減に関する具体数値
◉ 1. 吸音率(NRC:Noise Reduction Coefficient)
吸音率とは、音をどれだけ吸収するかを示す値(0〜1.0)。高いほど吸音性が高い。
塗装面材 | 未塗装(金属面) | 吸音塗料施工後 |
---|---|---|
折板屋根(厚み0.5mm) | NRC ≒ 0.05〜0.10 | NRC ≒ 0.35〜0.60 |
例:吸音塗料「サウンドシールド」や「ファインアコースティック」等を使用
※NRC 0.60 は、音の60%を吸収するレベルで、軽量吸音パネル並みの効果が得られることも。
◉ 2. 実測の音圧低減(工場内音環境)
測定位置 | 施工前 | 施工後 | 軽減幅 |
---|---|---|---|
工場内中心部 | 約78〜82 dB | 約70〜74 dB | 約8〜10 dB 減少 |
屋根裏の反響音(雨天) | 約76 dB | 約66〜68 dB | 約8〜10 dB 減少 |
※これは「吸音塗装+天井裏面」など適切な施工面を選んだ場合の例です。
🧪 使用される吸音塗料の一例
製品名 | 特徴 | 用途例 |
---|---|---|
サウンドシールド(大日本塗料) | 水性・高多孔質・厚膜タイプ | 鉄板・天井パネル |
ファインアコースティック(関西ペイント) | 断熱・吸音を両立 | 折板屋根裏面など |
ノイズコントロールペイント(海外製) | 吸音+防カビなど機能複合 | 工場・トンネル内など |
⚠️ 注意点
-
吸音塗料は、厚膜施工(1mm前後)と広い塗布面積が必要。
-
遮音(音を通さない)効果は弱いため、音漏れ防止には遮音材との併用が必要。
-
塗布対象が天井裏・内壁面でない場合、期待値以下の効果にとどまることも。
断熱塗装の副次効果
- 遮熱・断熱を目的としたセラミック塗料などは、厚みのある塗膜が音の透過も軽減。
- 外気温対策だけでなく、屋内の音が外に漏れにくくなる副次効果も。
どんな現場で効果がある?
- 折板屋根の工場で雨音や機械音が響く
- 倉庫内で音が反響して作業しにくい
- 騒音苦情があり、防音対策を検討中
- 既存の構造を変えずに音環境を改善したい
こうした場合、塗装による制振・吸音対策は、比較的コストを抑えて実施可能な改善策です。
まとめ
工場・倉庫の音の問題は、作業効率・安全性・近隣対応すべてに関わる重要な課題です。
一般的には見落とされがちですが、「塗装工事」によってその一部は改善できる可能性があります。
機能性塗料をうまく活用し、快適で安全な作業環境づくりを目指してみてはいかがでしょうか?